スポーツ基本法の趣旨を理解し、指導者・団体は若い選手の未来を守ろう!【Sports japan 2013年1-2月号】

 日本スポーツ協会の機関誌「Sports japan」の「スポーツ法律入門」のコーナーの解説です。
「スポーツ基本法の趣旨を理解し、指導者・団体は若い選手の未来を守ろう!」とのテーマでの解説です。
「オーバーユース」は「使いすぎ症候群」とも呼ばれ、スポーツ現場で、特にジュニア世代の選手たちの中で、いま大きな問題となっています。将来性豊かな子どもたちを預かる指導者のみなさんには、オーバーユースによる障害を予防する責務があります。今回は、オーバーユースについて、法律的な解説をするとともに、先進的な予防の取り組みを紹介します。
近年、スポーツにおける安全問題は、「外傷(=ケガ)」と「障害(=オーバーユース)」の2つの視点から考えられています。
スポーツ振興法では、国と地方公共団体に対して、「スポーツ事故(=外傷)を防止する」努力義務を定めていましたが、障害(=オーバーユース)の予防に関する規定はありませんでした。また予防の努力義務の主体も、国と地方公共団体に限定されていました。一方、昨年(平成23年)に公布されたスポーツ基本法では、「心身の健康の保持増進及び安全の確保」を求めており、外傷だけでなく障害も予防する義務を明らかにしています。さらに国と地方公共団体に加えて、各スポーツ団体も安全を確保する努力義務があると定めています。
スポーツ団体とは中央競技団体だけではありません。都道府県や市区町村の体育協会や個々のチーム(スポーツ少年団など)をすべて含んでいます。スポーツ基本法は、すべてのスポーツ団体が、外傷と障害の予防に努めなければならないという義務を定めたのです。
スポーツに関する外傷・障害について、いま一番問題となっているのが、ジュニア層の障害です。
具体的な内容としては、まずジュニア時代にからだを酷使してはならないという注意喚起に始まり、ケガを予防するための正しい投球法やからだのケアの仕方、投球数のガイドライン、障害予防のチェック法、定期的な検診の重要性など、多岐にわたってさまざまな項目が記載されています。
またこの手帳は、小学校から高校まで継続して使うことを想定してつくられており、病院にかかった際は受診日と内容を記録し、医療機関と連携してスポーツ障害を予防していくことに取り組んでいます。現在は新潟県における野球での取り組みですが、、今後は全国的に、また他の競技でも、こうした取り組みが広く実施されることが望まれます。
障害を予防しながら効率よくトレーニングするためには、適切な間隔で適切な負荷を掛けることが大切です。不規則な間隔で突然過度な負荷が掛かったりすると障害が発生しやすくなります。これは急に暑くなったりする時期に熱中症が起こりやすいのと同じです。からだが暑さに慣れていない時期には、熱中症になりやすいので、特に注意が必要です。
スポーツ基本法では、スポーツ団体に、外傷と障害の予防の義務があることが明記されました。指導者も、スポーツ団体の一員として、外傷と障害の予防に取り組まなければなりません。目先の試合で勝利することに目を向けるあまり、子どもの健康を犠牲にすることがないようにしなければなりません。
ぜひそのことを念頭において、子どもたちの未来を潰さないような指導を心掛けていただきたいと思います。