スポーツ指導でなぜ暴力・ハラスメントが生じるのか【みんなのスポーツ、全国スポーツ推進委員連合機関誌、36巻6号、2014年】

 全国スポーツ推進委員連合機関誌「みんなのスポーツ」2014年6月号は「スポーツ・暴力・ハラスメント」の特集号です。
編集者から巻頭言を依頼されました。
文部科学省は、2013年5月に運動部活動の指導に関するガイドラインを発表しています。その内容は大きく分けると2つの柱があります。1つの柱は、経験のみに頼らず、科学に基づき、健康に配慮した過剰負荷のない正しい練習を行うこと。もう1つの柱は、コミュニケーションの重要性、言い換えると、どうしてこの練習が必要かを説明して、選手が自主的に活動することです。
「黙って俺についてこい」と言って、暴力で強制し、服従させるのでは、ロボットや軍隊の兵のような選手=自身で何が必要か、どのように解決することができるかを考えない指示待ち選手をつくるだけです。
自分で考えて、指示がなくても先を見越してプレイできる選手でなければ勝利は得られません。指導者には、科学的な指導方法と選手自らが理解できるコミュニケーション能力が求められています。自身の経験だけに頼る指導から、自身で研鑽し、常によりよい指導を探求することが指導者に求められています。
「厳しい指導はどこまで許されるか」という質問をよく受けます。厳しい練習は強制して行うものではありません。厳しい練習は選手自身が自ら行うものです。この質問をすること自体が誤っていることに気がつく必要があります。