1986年の仕事中の交通事故について2006年に軽度外傷性脳損傷の診断を受けて労災補償請求するも時効を理由に不支給となった処分を争う

市民の人権を守る

 軽度外傷性脳損傷の患者さんの中には、受傷後長い期間、どうしてこんな苦しみを負わないといけないのか理解できないまま苦しんでおられた方が多くおられます。  この事件の患者さんもその一人。受傷後、仕事ができなくなってしまったのに、事故による軽度外傷性脳損傷の症状と理解されず、家族からさえ怠けているのではないかと思われていた本当に気の毒な方です。

 幸い、受傷後20年を経過して軽度外傷性脳損傷と診断され、ようやく、その時点の医療給付請求、障害補償給付請求などをしましたが、中央労働基準監督署長は時効を理由に不支給処分をしたのです。

 時効制度を全面的に否定するつもりはありませんが、このようなケースで時効を援用するのが本当に社会的正義に合致しているのでしょうか?厚生労働省の職員のみなさん、どう思われますか?

○ 2010年6月に提訴(訴状)

○ 2010年8月20日:第1回口頭弁論期日。
 国は従来どおり労働災害補償請求権の時効消滅を主張(答弁書)。

○ 2010年10月29日:第2回口頭弁論期日。
 何と、国は、期日の1週間前になって、患者さんの状態は軽度外傷性脳損傷の症状ではないし、本件交通事故との因果関係はないという主張を記載した準備書面を提出してきました(被告第1準備書面)。従前の消滅時効の主張では、国の主張を維持できないと自ら認めたような主張です。
 国は、従前軽度外傷性脳損傷であることを認めて行政訴訟まで来ているのに、この時点で従前の自らの主張に反した不支給処分理由への変更は許されないという、原告の反論を記載した準備書面を早速作成して、第2回期日には、反論まですませました(原告第1準備書面)。

○ 2011年1月14日:第3回口頭弁論期日。
 被告は、原告の症状が軽度外傷性脳損傷でないとの主張書面提出(被告第2準備書面)。
 原告は被告に対して次の3点について求釈明要求(原告第2準備書面)。

(1) 新たな処分理由への変更は、追加・変更が決定時の理由とされなかったことに背信的な事情があるか否かに対する法律上の主張を明らかにされたい。
(2) 障害補償給付請求権の時効起算についての法律上の主張を明らかにされたい。
(3) 療養補償給付請求権についての時効起算についての法律上の主張を明らかにされたい。
○ 2011年3月17日:第4回弁論準備期日。大震災の関係で期日延期。

○ 2011年4月28日:延期後の第4回弁論準備期日。
 合議体での審理に移行。
 被告は、障害補償給付の消滅時効の起算点について判例を引用した主張(被告第3準備書面)。
 原告は、被告が引用する判例を誤読しており、被告が自ら引用している判例にさえ反したであることを主張。さらに釈明をしていない点についての釈明を要求(原告第3準備書面)。

○ 2011年7月4日:第5回弁論準備期日。
 被告の主張準備予定