浦和レッズ第三者委員会報告書とサポーターへのメッセージ

 天皇杯JFA第103回全日本サッカー選手権大会ラウンド16(4回戦)名古屋グランパス戦(2023年8月2日、CSアセット港サッカー場)において、浦和レッズサポーターによる①フィールドへの飛び降り、②相手サポーター及び警備運営スタッフに対する暴力等の試合運営管理規程違反行為が生じました。

浦和レッズは、直後からクラブとして行える対応を行ってきましたが、さらに必要な措置を検討するために、本事案に限らず、過去において発生した試合運営管理規程違反事案とそれらに対するクラブの対応を分析し、再発防止施策と教育・啓発施策を検討、実施することを目的に、社外有識者からなる第三者委員会(委員:8名)を立ち上げ、2023年11月14日から調査と分析をし、2024年2月16日には公開シンポジウムも開催をしました(浦和レッズ第三者委員会公開シンポジウム)。

第三者委員会の報告書は、2024年3月には作成が完了し、現在その全部が浦和レッズホームページに掲載されています。


私が第三者委員会の一人として、浦和レッズのサポーターのみなさんに伝えたい気持ちです。

レッズファン・サポーターは、選手・クラブとともに闘い、勝利を目指す、という誇りある集団だと信じています。ホームゲームはもちろん、チームの勝利のために、遠方のスタジアムにも、海外のスタジアムにも応援に駆け付ける。チームにとって心強い仲間のはずです。

1993年Jリーグ発足当時、レッズは成績が低迷し「Jリーグのお荷物」と揶揄されるチームでした。ファン・サポーター、選手、クラブが一体となってチームをつくり上げてきました。Jリーグ発足後30年。国内三大タイトルを全て獲得し、3度のACLチャンピオンズリーグ優勝を成し遂げたのは、ファン・サポーターの力があってのことです。

この素晴らしい歴史と実績あるレッズサポーターは、2024年天皇杯全日本サッカー選手権でも優勝を目指していた。それなのに、優勝どころか、天皇杯に出場さえできないという結果を招くことになったのはどうしてなのでしょうか?

天皇杯に出場できないということは、選手の出場機会を奪うことになる。選手がどれだけ痛みを受けたのか。これがわかっていないサポーターはいません。

「レッズサポーターはならず者」と言われる。多くのファン・サポーターが、胸を張ってレッズを応援することに躊躇を覚える。これが、サポーターの望むところだったのでしょうか。

これまでも、レッズには何回も制裁金が科されています。「暴動」とまで報じられた今回の問題でも、スポンサー離れ、開催試合の減少、グッズの売り上げ減少等でクラブに経済的なダメージがある。このような経済的ダメージがなければどれだけチームの強化ができたのか。サポーターであれば容易にわかることだと思います。

「レッズが好き」、「選手と一緒に闘う」という思いでスタジアムに来ていたサポーターで、スタジアムに来ることさえ許されないという処分を受けることを望んでいた人はいないはずです。

それなのに、なぜ、今回の問題が起こったのか。第三者委員会の調査と検討の内容はこれまでの報告者が述べ、多岐にわたる提言も紹介されています。

私は、ファン・サポーターに1点だけ訴えます。

「ルールを守ってチームの勝利をめざす」

これをファン・サポーターとクラブの文化とすること。これを宣言して実行しましょう。

レッズは、これまでも、「継続的な対話」、「スタジアムルールの改定&徹底」、「SportsforPeaceプロジェクト」、「サポーターミーティングの開催」等で、「スポーツはルールある闘い」であることを共有しようと試みました。クラブの力不足もあり、全てのサポーターに正しく理解されるには至らないまま今回の問題にいたってしまいました。

「フィールドに降りてはいけない」というルールは知っている。しかし、「やられたらやりかえす」、「売られた喧嘩なんだから、行ってやる」という場面になると、「フィールドに降りてしまう」。一部サポーターの価値観。

「立ち入り禁止エリアに入ってはいけない」というルールは知っている。しかし、「なめられた」、「煽られた」と思うと、「それを黙って見ていることはできない」として、立ち入り禁止エリアであることはわかっていても、「相手チームサポーターエリアに行き、抗議する。」。この一部サポーターの価値観。

「『売られた喧嘩』、『なめられた』という場面では、ルールを守らない行動が許容される。『これがレッズサポーターだ。』」という誤った認識があったのではないでしょうか。これが今回の問題の根幹だと考えています。

「レッズを勝たせるためにどうすればいいか」と考えるのが、本来のサポーターです。レッズを勝たせるために、自らの気持をコントロールすることがどれだけ大事なことなのか。ファン・サポーターのみなさん。一緒に考え、行動しましょう。

レッズサポーターは、過去に問題を自ら解決した経験があります。かつて、レッズサポーターによる「ピッチへの物の投げ込み」行動がありました。今は、このような行動は見られません。何があったのか。

レッズファン・サポーターの間で「ピッチへの物の投げ込み」は、「選手に対する裏切り行為だ」という認識が共有化され、自らを律したからです。レッズサポーターは、自ら問題を克服した成功体験をもっています。今回の問題も必ず克服できます。

「ルールを守ってチームの勝利をめざす」これをファン・サポーターとクラブの共通の文化として、レッズの勝利を目指しましょう。