管理人室はマンション居住者全員の共有財産
横暴な分譲業者から居住者の権利を守る
東京地方裁判所1998年12月21日判決
(判例タイムズ1066号274頁)
庭園やプール等の設備が設けられたリゾート型高級マンションです。管理人が常駐していることをセールスポイントとして分譲されました。地上5階建て、戸数68戸、延床面積4708.95㎡。このマンション分譲業者と管理組合との紛争です。
当初は分譲業者がマンションの管理を担当していましたが、管理組合が自主管理に変更したことを契機に、分譲業者が管理組合に対して、管理人室(管理事務所と管理人の居住部分)は分譲業者の専有部分であると主張して、管理人室についての区分所有権の確認と管理組合が管理人室を使用するための賃料の支払いを求めた事案です。
管理組合は、当初は、おかしいとおもいながらも、法的判断できないまま、管理人室を使用できないのは支障があるので、分譲業者の要求に応じて、管理人室の賃貸借契約を締結してしまいました。
しかし、管理組合が管理人室を使用するのに賃料を払わなければならなのはおかしいではないかと考えて、相談にこられた事件です。
裁判所は、「本件管理人室は右管理事務室と機能的に一体として利用することが予定されていたというべきである。そうすると、本件管理人室は、利用上の独立性を有しないものと認められる」と判断して、共用部分であるとしました。
管理組合が一旦支払った管理人室賃料については、裁判所は、「共用部分ではないかという疑いを持っていたものの、これを断定するに足りるだけの法的知識もなく、本件建物の管理を優先させるため、本件賃貸借契約を締結した」と判断して、既払の賃料について不当利得返還請求を認めました。
もう一つの争いは、マンションにある駐車場をめぐる紛争でした。分譲時のパンフレットによれば、「共用部分設備」「洗車付専用駐車場17台分」とありましたが、分譲業者は、これを本件建物竣工後60年間、6円/㎡という低額で利用できる権利を取得していると主張したのです。
専用使用権の成立は認められましたが、分譲業者は管理組合に対して、6円/㎡という低額な利用料金さえ支払っていなかったことを理由として、専用使用権の解除を認めました。
将来的な部分としては、マンション居住者が、管理人室と駐車場の権利を確保できた事件です。
マンション居住者の権利を守ることができた一事例です。