危険な状態を放置していた公園管理者の責任をただす
東京地方裁判所2008年7月11日判決
(判例時報2037号66頁,判例タイムズ1301号192頁)
文京区立西片児童公園の公道との出入口には、「とびだすな!!文京区」という看板が掲示されていました。この看板の支柱の下端には漏斗の形状をしたコンクリートがあり、この部分を地中に埋めて固定していました。
原因は不明ですが、この看板の地中部分の周囲の土が掘り返され、看板は「起き上がり小法師(おきあがりこぼし)」のようにグラグラしていた状態となっていたため、小学校6年生の男児が、この標識をグラグラさせて遊んでいました。乳児と共に公園に来ていたお母さんが水道で手を洗おうとしていた時に、お母さんの頭にこの標識をぶつけてしまった事故です。
標識を遊び道具とするのは、施設の本来の使用方法ではありません。
しかし、子どもは、好奇心が強いものの、危険に対する認識力が十分でないという特徴があります。
このような特徴をもった利用者を想定する以上、看板を遊び道具にしかねない状態で放置をしておくことは、公園の通常有すべき安全性に欠けると判断された事案です。
この事案では、危険な状態になっていることに気がつき、補修の対象としていましたが、補修実施までの管理が十分でなかったために事故が生じています。
公園など児童が利用する施設の安全性の確保の考え方について先例の一つです。
公園の安全性に関しては、遊具事故が生じると遊具を全部撤去してしまうという管理例が見受けられます。このような対応には賛成できません。個々の遊具の安全性を検討し、危険な遊具は補修や撤去をし、安全な遊具は引き続き使用可能とするという対応が必要と考えています。