公園でのキャッチボール中のボールが胸部に当たった心臓震盪死事故判決-仙台地判平成17年2月17日【日本スポーツ法学会年報12号、2005年】

 公園でのキャッチボール中のボールが胸部に当たった心臓震盪(しんとう)死事故判決-仙台地判平成17年2月17日の判例評釈です。
小学校4年生が、公園で、軟式ボールを使って友人とキャッチボールをしていたところ、それたボールが10歳の児童にあたり心臓震盪により死亡したと認定された事案です。
ボールが児童の胸部に当たったか、死因が心臓震盪であったかについては、争いがあったが裁判所はいずれも認めました。
これまでも野球・ソフトボールのボールが人に当たり、負傷死亡した事例で判決にまで至った事故は多数あるため、被害者が、野球などのスポーツ当事者か、あるいは非当事者かという視点から2つに大別できます。
被害者が野球などのスポーツ当事者の事故について、その発生要因の点から分類しますと、①ボールを注視していないためにボールにあたる事故、② ボールを注視していてもボールを回避することが不能である事故、③ボールの使用を本来の使用目的とされている施設において発生したもの、④ボールの使用を含む複合的な使用目的の施設において発生したもの、⑤ボールの使用を対象としていない施設において発生したものに分類できるところ、本件事故は、被害者が野球などのスポーツ非当事者です。
山崎公園の中で本件事故が生じた場所は、いわゆる南側のグランド部分ではなく、砂場、ブランコ、シーソー、滑り台、グローブジャングルなどがある北東の区画であり、客観的な形状は、「ボールの使用を対象としていない施設」における事故(⑤の類型)です。
ボールが人に当たれば、負傷ないし死亡という結果を生じる可能性があります。予見可能性が求められるのは、予測できない結果について責任を問われることは社会的な活動の自由を阻害するという過失責任主義の要請です。本件においては、〔ボールが当たること→負傷・死亡〕という予見がある以上、〔予測できた結果について責任を問われる〕のですから、過失責任主義の原則の点からも相当と考えます。