自由と正義40巻9号(1989年9月号)は、「賠償医学を巡る諸問題」の特集です。岡村親宜弁護士との共同で「過労死を巡る諸問題」の総説を執筆しました。
「過労死」が社会的に注目されるようになったのは、「過労死」が、急成長をしている経済大国日本の社会の暗部を象徴する社会現象であり、本来、あってはならないできごとであるにもかかわらず大量に発生しており、しかも被災者と家族が、法の保護の対象外に置かれ、社会的に救済されていない、「これではたして良いのか」という社会認識が広く形成されてきたことにあります。
医師、弁護士、労働組合活動家らでつくる「ストレス疾患労災研究会(代表者上畑鉄之慕公衆衛生院成人病室長ら)は、1988年6月18日、「過労死110番」電話相談窓口設置しましたが、電話相談は1年間で約1,000件の相談が寄せられました。
本稿では、過労死をめぐる予防・補償・賠償の法律問題にテーマにその問題点を明らかにしました。過労死等という無念な死にざまが激減することを願うだけです。どんなに経済大国になろうとも、大量に働く者の生命と健康が侵害され、それが許容され、遺族が社会的に救済されていない社会に未来はありません。法律家の支援の手が待ち望まれています。