スキー、スノーボードの事故は増加傾向。その危険をしっかりと認識しよう【Sports japan 2012年11-12月号】

 日本スポーツ協会の機関誌「Sports japan」の「スポーツ法律入門」のコーナーの解説です。
 「スキー、スノーボードの事故は増加傾向。その危険をしっかりと認識しよう」とのテーマでの解説です。
 ウインタースポーツの中でスキー・スノーボードの事故訴訟が増加しています。レジャー白書によると、スキー・スノーボード人口は、1993年に1890万人(スキー1860万人、スノーボード30万人)でしたが、2009年には1140万人(スキー720万人、スノーボード420万人)に減少し、リフトの輸送人員の統計では、2011年は1994年の36%まで減少しているにもかかわらず、訴訟に至る事故が増加していることは問題です。
 スキーやスノーボードにおける訴訟を通じて、事故の予防のポイントを解説します。
 スキー事故は、大きく分けると「人と人がぶつかるケース」と、「整備されたゲレンデにおいて物体にぶつかるケース」の2つがあります。
 スキーヤー(スノーボーダーを含みます)同士の衝突事故については、基本的には上方のスキーヤーが事故の回避義務を負います。
 初心者が加害者となるケースの特徴の1つは、技術的に未熟なために、下方のスキーヤーを確認しているにもかかわらず、コントロールできずに、衝突する事故です。特に、スキーヤーとして一定の技術水準がある人がスノーボードに挑戦する時に注意が必要です。スキーヤーとしては経験あるゲレンデであっても、スノーボードで滑走するには難度が高く、コントロールを失う場合があります。自分の技量にあったゲレンデを選んで滑るということが、事故防止の上で大切です。
 上級者が加害者となるケースの特徴の1つは、緩斜面から急斜面に変わる場所での事故です。上級者が高速で滑走すると、この場所では小さなジャンプをすることになります。急斜面に変わってまもないところに下方のスキーヤーがいたにもかかわらず、気がつかないままジャンプしてしまい、回避できずに衝突したという判決が3件あります。
 整備されたゲレンデ以外の場所での事故は自己責任
 ゲレンデ外の場所や閉鎖されているゲレンデにおける事故があります。スキーヤーがあえて入ったケースと掲示を見落として不注意で入ったケースがあります。いずれにしても、このような整備されていない場所での事故は自己責任となります。これまでに、雪崩に巻き込まれる、崖下に転落する、クレパスに転落するなどの事故が生じています。
 整備されたゲレンデにも危険は潜んでいます。樹木、リフト・照明の支柱への衝突事故があります。ゲレンデの管理者は、「通常有すべき安全性」を確保しなければなりませんが、何があっても100%事故が起こらないように管理することは求められておりません。スキーは自然を利用したスポーツですから、競技の特性として、自然に伴う一定の危険は許されているという考えがあるからです。整備されたゲレンデに許されている危険性については、スキーヤーが自ら回避しなければなりません。
 最後に、スキー事故で注意したいのは、自分が被害者とならないようにするだけでなく、思いがけず加害者になってしまうケースがよくあるという点です。
 加害者になることがないように注意することがなによりも大事ですが、万一事故が起こってしまった場合には、賠償金額が高額となる場合もありますので、ぜひ事前に保険に入っておくことを忘れないようにしてください。