スポーツ活動中に子ども(選手)がケガをした場合、指導者はどこまで責任を問われますか(2)【Sports japan2013年9-10月号】

 日本スポーツ協会の機関誌「Sports japan」の「スポーツ法律入門」のコーナーの解説です。
 「Q スポーツ活動中に子ども(選手)がケガをした場合、指導者はどこまで責任を問われますか。」との質問に前号に引き続き答えています。
 スポーツ活動を行う際、指導者はケガが起こらないよう常に注意しながら指導することが大切です。しかし、スポーツをしていれば不可抗力でプレイヤー間の事故が起こることはあります。例えば、サッカーのプレー中に選手同士がぶつかってケガをすることはあるでしょう。競技(あるいは遊戯)本来の活動を行う中で起こりうる「競技中の通常の危険」によるケースです。一方、プレー以外の行為で起こる事故もあります。例えば、ふざけてバレーボールを蹴って近くにいた頭部を強打した、子ども同士が遊んでいてケガをさせてしまった等。本来の目的とは違う行為によりケガが生じる「競技中の通常の危険ではない」ケースです。
 問題となるのは、それぞれのケースで、どこまで指導者が責任を問われるか、ということです。
 前号では、①競技中の通常の危険によって起こるケガ(指導者の責任なし)、②競技中の通常の危険だが、指導状況によって起こるケガ(指導者の責任あり)について解説をしました。本号では、③競技中の危険ではないが、避けられなかったケガ(指導者の責任なし)、④競技中の危険ではないが、避けることができたケガ(指導者の責任あり)について解説をします。
 競技本来の活動ではない状況で起こったケガで、指導者に責任がないケースとしては、中学校の野球部が大会出場のために校外の会場へ行き、付近の公園で待機させていたところ、子ども同士が暇つぶしでドングリを投げあい、それが別の生徒の目に当たって手術をした(平成10年/広島県)→中学生であれば、指導者が注意するまでもなくドングリを人に向かって投げれば危険であることは認識できる。またそれまでも校外での試合は数多く経験しており、生徒だけで待機させることについて指導者が注意義務を怠ったとは認められないことから、指導者の責任はないとされた事例などを紹介しました。
 競技本来の活動ではない状況で起こったケガで、指導者が責任を負うケースとしては、中学3年生の男子生徒が、休み時間に教室で鉄パイプをバット代わりにして野球をやっていたところ、滑って手元から抜けた鉄パイプがたまたま居合わせた女子生徒に直撃し、骨折や歯を8本欠損する事故が起こった(昭和57年/千葉県)→遊びで使うと危険な鉄パイプを校内に放置していたこと、また日ごろから生徒がこうした危険な遊びをしないよう指導、監督していなかったことから、指導者の責任があるとされた事例などを紹介しました。
 競技(遊戯)本来の活動以外での事故を防ぐポイントは、好奇心旺盛な子どもたちが、競技に使用する用具や周辺にある物を使って、どのような遊びをするのかを、子どもの目線で考え、危険な行為については、その危険性を十分理解させる指導です。さらに、普段から危険な行為が発生しやすい状況は放置せず、片付けておく対応が必要です。