学校部活動としてのあり方についての議論を【日本部活動学会研究紀要第5号、2013年】

 部活動の地域移行をめぐって、学校部活動の課題が注目されています。
学校部活動は、子どもたちのスポーツや文化活動の基盤として、すぐれた面をもっています。2016年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査では、「縦割りの交流」、「自主的な準備・計画」、「運動遊びの多様性」等が子どもから高い評価を受けています。
しかし、部活動は、近時は、「ブラック部活」と言われる弊害が目立ってきました。これは、子どもにとって「ブラック」という面と、教員にとって「ブラック」という面の両面があります。「ブラック部活」の要素は次の5つがあります。
(1) 部活動の長時間化。
(2) 部活動による大会の成績が、生徒募集という学校経営の目的で利用される、競技成績によるスポーツ推薦等の進学条件とされることで、過度の文化・スポーツ活動成績偏重により、子どもが望む部活動からの乖離が生じていること。
(3) 少子化の中で1校あたりの児童生徒数が減少しているために、子どもが望む種類の運動部あるいは文化部活動が実現しないという問題。
(4)子どもが主人公として自主的な活動である部活動の出発点が忘れ去られてしまっている弊害。
(5) 部活動は、「学校教育の一環」であるといわれていますが、「学校教育の一部」となるのか、あるいは、「学校教育」と連携した社会教育活動であるのかが曖昧なまま、教員には部活動指導を校務として行わせ(学校教育の一部)、時間外労働となる部活動指導は、公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)上許されていないため、学校教育外の教員の自主的な活動とされ、広範な違法状態が生じている問題。
子どもの文化・スポーツ活動は、学校部活動に限局されるものではなく、地域における社会教育活動としても行われることは、文化・スポーツ活動の多様性の一つとして推奨されるべきものです。
しかしながら、現在の部活動の地域移行は、ブラックな教員の働き方を改善する目的で、地域での文化・スポーツ活動の受皿がないところに、部活動の一部を強制的に移行しようとするものであり、様々な矛盾を生じています。
ブラックな教員の働き方と部活動との関係で言えば、部活動自体の問題点を解消することで、長時間の部活動指導という教員の働き方が改善される部分もあります。部活動が真に自主的自律的な活動となる、すなわち、生徒の、生徒による、生徒のための部活動が実現することは、結果として、現在の長時間部活動指導を余儀なくされている教員の過重負担の解消につながります。
しかしながら、現在の部活動の地域移行化は、受皿が十分でないところへの強制的な移行という問題があるだけでなく、上記の5つの問題点の内、(1)~(4)の問題は、棚上げにして、進められているため、正しい部活動の在り方を考えるという基本から逸脱して、小手先の改革をしようとするものでしかありません。このような解決方法は、正しくありませんし、部活動の在り方にとっても不幸な結果となることを危惧しています。