飛び込み事故とプールの設置管理の瑕疵【ジュリスト1013号、1992】


裁判所が、スポーツ医学・体育学の研究成果に立脚しないまま、飛び込みに適しないプールを「安全である」と判断しつづけていることが、「水深1~1.3mという『普通』のプールで、『普通』の飛び込みをする限り事故は起こらない」という「安全神話」を生み、飛び込み事故の発生を繰り返す温床となっているのではないかという視点から、判例のプールの設置管理の瑕疵に対する判断について、スポーツ医学・体育学の研究の到達点を踏まえて考察しました。
1 判例に見るプールの設置管理の瑕疵の判断基準
(1) 「公認規則」や「文部省の手びき」で定める各種プールの規格に適合していることを理由としてプールの設置管理の瑕疵を否定する判例
(2) 当該プールにおいて従前事故が発生していないこと、あるいは、同種の規格のプールが多いことなどを理由に設置管理の瑕疵を否定する判例
(3) 「公認規則」ないし「文部省の手びき」における規格に準拠するだけでは「通常有すべき安全性」を備えているといえないとする判例
2 プールの設置管理の瑕疵の判断基準の検討
(1) 国家賠償法二条一項の営造物の設置また管理の瑕疵
(2) 「公認規則」などの規格に適合していることをプールの設置管理の瑕疵の判断基準とすることの検討
(3) 「当該プールにおいて従前事故が発生していないこと」などをプールの設置管理の瑕疵の基準とすることの検討