航空機客室乗務員の腰痛・頸肩腕障害-日本航空(大田労基署・塚本労災)事件【労働法律旬報1517号、2001年】

 東京高裁は、2001年10月25日、日本航空(JAL) の客室乗務員であった塚本さんが航空機客室乗務員の業務に従事していて腰痛・頚肩腕障害を発症し1980年11月から翌年の 5月まで休業して療養した塚本さんの腰痛・頚肩腕障害は「業務上」の疾病であるとして労基署長の不支給処分を取り消すとの判決を下しました。逆転勝訴です。しかし発症から20年余の年月を経過した「あまりにも遅過ぎた判決」でした。
 翌日の新聞の朝刊は、ほぼ全紙がこれをニュースとして取り上げ、「腰痛・肩こりは労災、日航元乗務員の訴え認める」(日経)、「腰痛、肩こり、客室乗務員の職業病」「東京高裁逆転で労災認定」(東京)等と報道しました。塚本さんは「腰痛に苦しむ客室乗務員を一人でもなくそうとたたかってきた。客室乗務員の健康は乗客にもかかわる問題。今回の判決を安全運行に結び付けてもらいたい」と語りました。
 東京高裁判決の内容とその意義は、
1 早朝から深夜に及ぶこともある上に不規則な航空機客室乗務員の3連続勤務、2休日、3連続勤務、1休日の繰り返しの勤務による業務は、その業務内容・性質・労働環境と相まって、「腰部及び頚肩腕部に相当の負担のかかる」業務であると判断したこと、
2 当該労働者の業務の内容・性質、作業環境、業務に従事した期間等の労働状況、当該労働者の疾病発症前の健康状況、発症の経緯、発症した症状の推移と業務との対応関係、業務以外の当該疾病を発症せる原因の有無及び程度、同種の業務に従事している他の労働者の類似症状の発症の有無、当該疾病とその発症についての医学的知見等の事情を総合して判断したこと、
3 相当因果関係を肯定するために、「同種又は同僚労働者にとっても特に過重な業務したことによる精神的・肉体的負担が認められなければ相当因果関係は認められない」とする行政機関が採用している同種・同僚労働者基準説(客観的相対的有力原因説)を排斥したこと、
にあります。同種事例の先例としての価値を有する判決です。