ここまでできる高齢者の転倒予防 ― これだけは知っておきたい基礎知識と実践プログラム【日本看護協会出版会、2010年】

転倒予防の知識と実践プログラム 施設で暮らす高齢者の転倒リスクと予防対策-転倒事故判例から ( ここまでできる高齢者の転倒予防 ― これだけは知っておきたい基礎知識と実践プログラム,2010年)
 厚生労働省の人口動態統計によると、2008年に不慮の事故により死亡した人は38,153人、内転倒・転落により死亡した人は7,170人です。家庭内における転倒・転落で死亡した人は2,560人ですが、これを年齢別に見ると65歳以上が2,005人と全体の約8割を占めています。
 (財)日本医療評価機構の医療事故収集等事業報告では、死亡または後遺障害を残す可能性のある事故報告は2009年に903件ありますが、療養上の世話における事故は370件(40%)あり、この内、転倒・転落・衝突に関する事故が226件(25%)を占めています。
 家庭内においても医療機関においても、死亡や後遺障害を残す転倒・転落事故は多く、その中でも高齢者が占める割合が高いことを示しています。これは、家庭内や医療機関に限定されたものではなく、高齢者が生活をする施設において共通した課題と言えます。
 概ね2009年末までに判例集に掲載された転倒・転落事故判例(交通事故、スポーツ中の事故、故意による転倒など高齢者施設と関係ない事故を除く)を事故態様と一審判決の年代別に整理すると2000年以後の一審判決数は30件と全体の3分の2を占めており、転倒事故が法的紛争となるケースが急増しています。また、転倒・転落により死亡または重篤な障害を残した重大事故についての判例が大半を占めています。法的な紛争となる転倒・転落事故予防という点では、高齢者の重大事故となる転倒・転落事故に焦点を当てた対策が肝要です。

  目次
1 転倒をしないための施設の安全性の確保
2 介護の方法・態様に原因する転倒事故の予防のための配慮
3 夜間帯等の常時の見守りが困難な状況下における監視と身体拘束について
4 転倒した場合でも負傷しないあるいは重傷としないための措置