スポーツ活動中に子ども(選手)がケガをした場合、指導者はどこまで責任を問われますか(1)【Sports japan2013年6-7月号】

 日本スポーツ協会の機関誌「Sports japan」の「スポーツ法律入門」のコーナーの解説です。
「Q スポーツ活動中に子ども(選手)がケガをした場合、指導者はどこまで責任を問われますか。」との質問へ答えています。
スポーツ活動を行う際、指導者はケガが起こらないよう常に注意しながら指導することが大切です。しかし、スポーツをしていれば不可抗力でプレイヤー間の事故が起こることはあります。例えば、サッカーのプレー中に選手同士がぶつかってケガをすることはあるでしょう。競技(あるいは遊戯)本来の活動を行う中で起こりうる「競技中の通常の危険」によるケースです。一方、プレー以外の行為で起こる事故もあります。例えば、ふざけてバレーボールを蹴って近くにいた頭部を強打した、子ども同士が遊んでいてケガをさせてしまった等。本来の目的とは違う行為によりケガが生じる「競技中の通常の危険ではない」ケースです。
問題となるのは、それぞれのケースで、どこまで指導者が責任を問われるか、ということです。
ここでは以下のように、スポーツ活動中のケガを要因別に4つに分けて整理しました。
①競技中の通常の危険によって起こるケガ(指導者の責任なし)
②競技中の通常の危険だが、指導状況によって起こるケガ(指導者の責任あり)
③競技中の危険ではないが、避けられなかったケガ(指導者の責任なし)
④競技中の危険ではないが、避けることができたケガ(指導者の責任あり)
それぞれの事例を紹介しながら、今号と次号の2回にわたってお話ししたいと思います。
1 競技本来の活動中のケガで指導者に責任がないケースとして、小学校の授業でサッカーをしていて、たまたま蹴ったボールが別の生徒の目に当たり、視力が大きく低下してしまった(昭和50年/兵庫県)→サッカーをすれば故意にぶつけようとしなくても、そうした事故が起こり得るため、指導者の責任にはならなかった事案等を紹介しました。
2 競技本来の活動中のケガで指導者が責任を負うケースとして、中学校のハンドボール部の練習として校外の一般道で持久走をやっていたところ、疲労から下を向いて走っていた部員が通行中の老人に衝突し、老人が転倒して大ケガを負った(昭和61年/福岡県)→その生徒がふだんから疲れると前を見ずに走る傾向があることは広く認識されており、それについて十分な注意を払っていなかったため、指導者に責任ありとされた事案等を紹介しました。
これらの例からもわかるように、スポーツ活動中の通常の事故であっても、責任の所在は様々です。実施させていた環境に問題があるかどうか、事故当事者の子どもに危険に対する判断能力があるかどうか、指導者の指導力不足によって起こるものかどうか、事故につながる行動を認識しながら事前の注意を怠っていたかどうか等、事故をとりまく状況によって責任の有無は変わってくるのです。