どうすればセクハラやパワハラを防止できますか?【Sports japan 2015年3-4月号】

 日本スポーツ協会の機関誌「Sports japan」の「スポーツ法律入門」のコーナーの解説です。
 「Q.どうすればセクハラやパワハラを防止できますか?」との質問へ答えています。
 スポーツ界でのハラスメント-とくにセクシャル・ハラスメント、パワー・ハラスメントを中心に、これまでの判例を紹介して、セクハラ・パワハラ行為から、生徒や選手を守っていくために何が必要かを解説しました。
 学校全体におけるセクハラでの懲戒処分の統計を見ますと、「わいせつ行為等が行われた場面」という項目で部活動が占める割合は、6.5%パーセントであり、東京都公立学校教職員組合が1999年に行った調査によると、中学生の7人にひとりがセクハラの被害を受けているという結果が出ています。
 暴力やパワハラが行われる要因についてJOCが選手を対象に行ったアンケートで一番多かった回答は、「(指導者が)暴力に頼らなければ選手を強くできないと思っている」という指導力の欠如を上げる声でした。次に多かったのは、「指導者と選手が対等な関係になく、指導者にコミュニケーション能力がないため、力に訴えるしかない」という意思疎通の問題を指摘する意見です。
 セクハラやパワハラが顕在化しにくい理由として、ひとつは「選手のことを思ってやっている」という指導者の弁明があります。選手側としても、「私のためを思ってのこと」と思い込んで、「イヤ」と言えない、あるいは、「自分が悪いのだ」という被害者の思い込みによって沈潜化することもありますし、大会に出場する選手選考に影響するため、表に出しにくいというケースもあります。
 狭い世界で暴力が当たり前になると、誰も止められません。これはスポーツに限ったことではなく、たとえば会社でサービス残業が当たり前になると、「5時に帰ります」とは誰も言えなくなります。ムラ社会のルールのほうが、一般社会のルールより優先されるようになってしまいます。先に紹介したJOCのアンケートでは、そうした日本独特の文化を解決するために、外部の目を取り入れてほしいという意見がありました。
 また、そうしたトラブルがあったところで、どこに相談すればいいのかがわからないということも大きな問題です。紛争解決機関を導入すべき、さらにはそうした行為があった場合、厳しく処罰してほしいという意見も聞かれました。
 指導者は情熱をもつと同時に、常に研鑽して、正しい指導法を習得しなければなりません。正しい指導法とは、エビデンスに基づく科学的な指導と、コミュニケーション能力の2つの要素によって構成されます。
 「厳しい練習はどこまで許されますか」という指導者の質問は、そもそもこの質問をすること自体が間違いだということに気がつく必要があります。厳しい練習とは本来、指導者と選手とのコミュニケーションの中で、選手がその必要性を理解し、自ら行うものです。それを強制しようとするから過ちにつながってしまう。こうした部分を改善することで、日本のスポーツがよりよくなっていくことを願っています。