教員の命と健康を守るための課題_労働時間規制で守られない公立学校教員【季刊教育法205、2022年】

 教員が、過酷な労働条件の下で、「子どものために」と献身的に働き、倒れていく過労死は後を絶たない。文部科学省調査「精神疾患による病気休職者の推移」では、教職員の2018年休職者数は5,212人(0.57%)であり、この10年間は概ね同一の水準で推移し、休職者数の減少は見られていない。劣悪な教員の労働条件による健康被害は深刻である。中央教育審議会(中教審)は、2017年6月、「学校における働き方改革特別部会」を設置した。「特別部会では、開催直後から、教師の勤務実態については直ちに改善が必要な差し迫った状況にあるとの認識が委員から示された。」と危機感を示している。
日本においては労働時間を規制する法があるにもかかわらず、教員が無定量の労働を強いられ、過労死にまで至る現状がどうして生じているのか。これを打開するために何が必要であるのか。すでに多数の論者が述べているところであるが、改めて概観して課題を明らかにする論考である。