医師に何が問われているのか医師に何が問われているのか一江戸川養護学校背腰痛症公務外認定処分取消判決が示すもの【労働と医学69号、2001年】

 東京地方裁判所は、2000年12月20日、18年間重度障害児の教育に従事した江戸川養護学校教諭の背腰痛症は公務上災害であるとの判決を言い渡しました。
 地方公務員災害補償基金)以下「地公災基金」という)東京都支部長石原慎太郎は控訴せず、労働者側勝訴の一審判決は確定しました。
 1993年1月の公務災害認定請求に対し、①地公災基金東京都支部長、②同東京支部審査会、③地公災基金審査会はいずれも公務外であるとの誤った判断をしましたが、8年かけてこの誤りがようやく正されたのです。公務上であることは当然の結論です。
 本稿ではこの事件を通じて、
① どうして教諭は背腰痛を発症しなければならなかったのか一教諭の背腰痛症の発症はなぜ防止できなかったのか、労働安全衛生委員会と産業医は何ができ、何をしなかったのか。
② どうして教諭は、1991年9月の通院開始後、1994年1月に職場復帰できるまで療養に2年4か月もかかったのか、この間、治療にあたった医師は適切な治療をしていたのか、適切な治療をしていないならばその原因は何か。
③ 公務上認定請求後この判決が確定するまでの間、教諭の症状と公務との関係について様々な医師が意見を述べているが、判決で採用されなかった医師の意見はどこに誤りがあったのか。正しい結論を早期に得られるためには医師としてどのような視点で意見を述べることが求められているのか。
について問題点を指摘し、課題を明らかにした総説です。