「もうだいじょうぶ。あとはリハビリをがんばろう」という時期に突然発症し、死に至ることもある肺血栓塞栓症(PTE)。「手術は成功した。でも患者は亡くなった。あとに残るのは遺族の怒りと医事紛争だけ……」ということがしばしば生じています。
どれだけ予防策を講じても発生率が低下するだけで、発症を根絶することはできません。また、周術期発生率が最も高いにもかかわらず、整形外科医にとっては専門外の循環器疾患であることも問題です。
本書は、そうした整形外科医に対し、「PTEという専門外疾患に惑わされることなく、本来の運動器疾患治療に邁進できる診療環境を再び構築すること」を目的とした書籍です。
私は、「医療過誤問題における医療者の対処法」を執筆しています。
医療事故と医療事故訴訟の現状を紹介し、「労災事故訴訟は減少し、医療事故訴訟は増加するのはどうしてか」という視点から、医療事故が紛争に至る要因を分析しています。
「事故後の不適切な対応」が医療事故紛争の深刻化を招いているという事例を紹介し、医療事故が紛争に至る要因の一つとして、不幸にして医療事故が生じた時の対応で、患者が求めているものと、医療機関の対応とがすれ違いにあることを指摘しています。
従来は、医療事故が生じても情報は開示しない、謝罪しないという対応が、医療事故後の医療機関の正しい対処法だとされてきた。「(診療録を)開示しても何の不都合もないが、(医師会の)指針で決まっているのでできない。また、治療目的以外でカルテを開示すると、さまざまなあら探しをされて、悪用される恐れがある」等の理由で診療録を開示しないという対応が紛争を深刻化させたことを解説しています。
迅速公正な補償手続が紛争の深刻化を防ぐ対策として、①一旦事故が生じた場合には、事実関係をすみやかに調査し、②医療機関に責任があるか否かを判断し、③責任が認められる場合には、早期に謝罪し、再発防止策を講じ、損害を補償することを提案しています。